石破総裁に求める協調的な外交
2024.10.02
自民党総裁選挙は9人の候補による激戦となり、決選投票を経て石破茂氏が高市早苗氏を逆転し、第28代総裁に選ばれた。四半世紀に及ぶ連立政権のパートナーとして心から祝意を送りたい。戦い終わればノーサイド、一致結束した自民党の新体制を築いてもらいたい。
石破新総裁に期待することは、何よりもまず、政治への信頼回復である。連立政権の原点である2012年の政権合意前文には「決して驕(おご)ることなく真摯(しんし)な政治を貫くことによって…国民の本当の信頼を取り戻す」と記され、今回の政権合意に至るまで受け継がれている。肝に銘じなければならない。
その上で、岸田文雄政権で進めてきた基本的な政策の方向性を受け継ぎ、持続的な賃上げと経済の好循環、脱炭素社会の構築、少子化対策、法の支配に基づく協調的な外交など芽が出始めた流れを確実に成果に結びつけてもらいたい。
石破氏には課題もある。氏は、まじめな勉強家で知られ、特に安全保障分野では持論を展開してきた。「アジア版NATOで核共有検討」や「日米地位協定の改定で自衛隊のグアム駐留」などを提言している。
しかし、これらは政府の見解とは異なるので、首相に指名された後は、歴代内閣の方針とぶつかることになる。外交面でも米国ばかりでなく韓国、引いては中国とも摩擦を起こすおそれがある。
もちろん、総裁選で他の候補と差別化をはかるために持論を展開する場面と内閣を率いて、政府与党で国会の合意形成を図る立場とは次元が異なることは百も承知であろう。党の要職や閣僚経験の豊富な石破氏は適切に対応するであろう。
特に、外交は外相以上に首脳の役割が大きくなっており、首相就任後、この秋の重要外交日程がめじろ押しである。法の支配に基づく国際秩序の維持強化と人間の尊厳を実現する協調的な外交を主導して平和と安定を確保していくことが、日本の首相に求められており、経験と人脈を形成することが課題であろう。
先月28日、公明党大会が海運クラブで開かれ、石井啓一代表、西田実仁幹事長、岡本三成政調会長、佐藤英道国対委員長、三浦信祐選対委員長ら新しい執行部が船出した。15年間代表の任にあった私をはじめ衆院のベテランも若手に道を開き、清新なスタートとなる。
党大会に来賓として挨拶に立った石破総裁は、09年に自民党が下野して一番苦しいときに、一緒にいてくれたのが公明党であり、政調会長を務めた折の公明党政調会長が石井啓一氏だったと強調し、政権奪還後の安倍晋三政権では幹事長として自公連立の絆を深めたと力を込めた。
自公両党は去る30日、「連立政権合意」を結び1日の石破氏の首相指名に臨んだ。組閣後、首相の所信を述べ、与野党の論戦を経て国民の信を問う解散総選挙を迎えることになる。
私は党代表の立場とは少し視点を変えて、本コラムの執筆を続けていきたい。
(公明党常任顧問)
【2024年10月2日(1日発行)付 夕刊フジ掲載】