「国土強靭化」予算の裏付けもって実行を
2024.09.04
「夏の台風は迷走する」とは日立市の天気相談所長だった私の父がよく口にした気象格言である。この度の台風10号がその例だ。速度が遅く発達して強い勢力を保ったままゆっくり西や東に迷走し、洋上の湿った空気を大きく巻き込みながら東海や関東にも大雨をもたらした。
各地に土砂崩れや浸水、陸海空の交通網寸断など大きな被害を及ぼした。亡くなられた方にお悔やみ申し上げ、被害に遭われた方にお見舞いを申し上げる。
近年、水害の規模が昔より大きくなっているように感じる。統計では、2010年以降多雨期が続いており、集中豪雨の年間発生回数も増えている。地球温暖化の影響で日本近海の海水温が上昇し、多量の水蒸気を含んだ雲が発生しやすくなっているため、水害が激甚化、頻発化しているのだ。今後、ハード・ソフトにわたる総合的な防災対策が必要だ。
まず、私たちが日頃から、天気図、衛星画像、レーダー情報などの気象情報をキャッチし大まかな予測をできるようにすることが大切だ。気象庁は「線状降水帯」の予測精度を上げ、自治体は気象防災アドバイザーを活用し水害リスクマップを作成して、予防や避難に生かす取り組みが重要となる。
全国109の一級水系を中心に国、都道府県、市区町村、民間のあらゆる関係者が協働する「流域治水対策」を計画的に推進する必要がある。奏功した例を挙げる。今年7月山形県の赤川流域では2日間で7月降雨量の9割を記録する大雨となったが、近年の緊急加速化対策で河道掘削による水位低下と月山(がっさん)ダムの洪水調節による水位低減の効果を生み出し、堤防決壊を防ぎ4000戸の浸水被害を免れた。
堤防や遊水池整備、ダム建設や再生、地下空間活用などのインフラを整備する「国土強靱(きょうじん)化実施中期計画」を今年度中に策定し、予算の裏付けをもって予測可能な実行を図ることが重要だ。
8月26日の中国軍機による長崎県男女群島付近の領空侵犯は、国際法上許される余地はなく冷静に毅然(きぜん)と対処すべきである。政府は外交ルートで中国側に抗議し、訪中した日中友好議連の二階俊博会長が遺憾の意を表明し、再発防止を強く求めた。会談した中国全人代の趙楽際委員長は「領空侵犯の意図はない」とし、当局間での適切な意思疎通を期待すると応じた。
7月に海自護衛艦「すずつき」が中国浙江省で領海侵犯して抗議を受けた際、「技術的なミス」と応じたことへの意趣返しとする見方もある。
8月19日にはNHKラジオ国際放送で、中国籍の外部スタッフが「釣魚島は古来から中国の領土です」などと原稿にない発言をした。これは日本の立場と異なる政治的主張を並べる意図的な行為であり、聞き手に誤解を与える許されない行為だ。NHKは外部契約の信頼性確保と厳格なチェック体制を確立し再発を防止すべきである。
法の支配の徹底が求められる。(公明党代表)
【2024年9月4日(3日発行)付 夕刊フジ掲載】