軽減税率は加工食品も 衆参同日選はやるべきではない

掲載記事2015年12月09日 (水曜日)

151208zubatto.jpg2017年4月の消費税率10%引き上げに合わせて「軽減税率の導入」に注目が集まる。師走の中旬を控え、来年度の税制を決める時期が迫っている。これが決まらないと、下旬に予定される歳入と歳出を合わせた来年度予算の概算も決められないからだ。しかし、与党の協議は難航している。

軽減税率は、所得に占める軽減額でみると、所得が低くなるほど軽減の効果が高くなる。消費税の欠点である逆進性を緩和する切り札だ。買い物をするときに、確実に効果を実感できる。低所得者に現金を配る手間も財源もいらない。一律にお金をもらうより、自分の消費生活に応じて軽減されるところもお仕着せにならなくてよい。

8%引き上げで、消費の低迷が長引いた。これを教訓とすれば、10%引き上げがさらに消費活動に重くのしかかることに配慮して、消費者一人ひとりの痛税感を緩和し、国民の消費全体を萎縮させないことが重要である。入るはずの消費税収が目減りすると心配するが、納税者からみれば可処分所得が消費税で目減りしない分、全体として景気への悪影響を和らげる経済対策になる。

社会保障の安定財源も足りなくなるとの主張は妥当でない。社会保障の財源は消費税だけではなく、所得税や法人税など税収全体で支えている。給料のベースアップがあれば、所得税や住民税の税収がその分安定する。企業が設備投資すれば、固定資産税が増える。自治体の住民税や固定資産税が増えて安定的になれば、国からの地方交付税が減って財政に余裕ができる。

ベースアップなどで賃金の上がった人は、所得も比較的高めである。このような人にも軽減税率の恩恵が及ぶとしても、所得税や住民税の納税額も増えているから、案外、釣り合いは取れているのである。

公明党は、以上のような軽減税率の必要性を踏まえて、国民との公約であることと、欧米で広く定着している軽減税率制度の安定性を重視している。有権者の反応は、直近の調査でも、酒を除く飲食料品を広く軽減税率の対象とすることを望む声が一番多い。消費者にとっても事業者にとっても分かりやすいからだろう。生鮮食品だけでよいとする人は少なく、弁当、総菜、のり、納豆、インスタント食品などの加工食品は欠かせないと思う人が圧倒的である。

安倍晋三首相も述べたように、「国民の理解を得て」軽減税率の導入を図ることが大切だ。このところ、与野党幹部から来年の参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」についての発言が相次いだ。衆院の解散は首相の専権事項だ。事実、安倍首相は「全く考えていない」と語った。「やる」も「やらない」も述べるはずがない。

憲法は衆参議員の任期を変えて、時点の違う民意を取り込もうとする趣旨だ。同日選は政権を不安定にするリスクも高いし、選挙協力の効果も弱まる。やるべきではない。

(公明党代表)2015年12月9日(8日発行)夕刊フジ掲載】

 

「過激主義生み出さない社会の構築」こそ日本の役割

掲載記事2015年11月24日 (火曜日)

4999_001 - バージョン 2.jpgフランス・パリで13日、過激派組織「イスラム国」(IS)による同時多発テロが発生し、犠牲者は130人にのぼった。エジプト東部シナイ半島でも先月末、ロシア旅客機が墜落し、乗客・乗員224人が死亡した。プーチン大統領はこの件も「ISのテロ」と断定した。

ISは、シリアで日本人ジャーナリスト、後藤健二さんを殺害したテロ集団である。これまで、米国主導の「有志国連合」がIS攻撃を続けてきたが、仏露両国が連携する動きも出ている。

国連安全保障理事会は20日、フランスが提出したISによる一連のテロ事件を非難する決議案を全会一致で採択した。決議では、パリ同時多発テロやロシア機墜落をはじめ、今年6月以降のISが関与したとみられるテロ事件を非難したうえで、新たなテロを阻止するため、国際法が許す範囲であらゆる手段を尽くすよう国際社会に求めている。

安倍晋三首相は22日、東アジアサミットの行われたマレーシアで「テロと対峙していくという、国際社会の団結をしっかりと示すことができた国際会議となった。わが国は国際社会と連携して国際テロを封じ込めるための対策に全力を尽くしていく」と語った。

そして、各国の法執行機関の能力向上支援、テロリストの資金源対策、テロの根源にある過激主義を生み出さない社会の構築支援などに取り組む姿勢を示した。

私は19日の記者会見で「テロは断じて許されない。政府はテロを未然に防止するため重層的な対策をとる必要がある」と述べた。公明党は昨年に続き、本年9月末にも、国会議員2人を中東に派遣した。ヨルダンのシリア難民キャンプや、パレスチナのヨルダン川西岸、ガザ地区などの実情を調査し、日本のあるべき支援について政府に提案した。

わが国は、安倍首相の示した「日本にふさわしい支援」を積極的に展開すべきである。特に、テロの根源にある過激主義を生み出さない社会を構築することは、日本が掲げる「人間の安全保障」の理念に基づき長年培ってきた大切な取り組みである。

来年5月には、伊勢志摩サミット(主要国首脳会議)が開催される。わが国のテロ対策を一層強化しなければならない。国際社会と連携した情報収集の強化が重要であり、安倍首相が「国際テロ情報収集ユニットを12月上旬に設置する」と発表したのは当然だ。

自民党内には「共謀罪」新設の動きもあるようだ。テロなどの重大な組織犯罪の謀議に加わった場合に処罰の対象となるもので、国連が採択した「国際組織犯罪防止条約」で国内法を整備することが義務付けられている。

しかし、これまでの国会審議で不安や懸念が示されており、年明けの通常国会の審議の見通しなども踏まえると、成立は困難である。今後、国際行事や国際テロ対策の動向を見ながら慎重に検討していくべきである。【2015年11月25日(24日発行)掲載】

消費税率引き上げ、軽減税率による痛税感の緩和を

掲載記事2015年11月11日 (水曜日)

151110.jpg日本と中国、韓国など、東アジアは世界貿易の約2割を占める。その貿易を支える海上交通路(シーレーン)が南シナ海を通る。ベトナムとフィリピン・ボルネオの間にある南シナ海には、石油や天然ガスの海底資源があるともいわれ、航路の東側に広がるスプラトリー(中国名・南沙)諸島の領有権をめぐって、ベトナムとフィリピン、中国、台湾、マレーシアなどの間に争いが生じている。

フィリピンは、中国を相手にオランダのハーグ国際仲裁裁判所に提訴し、裁判所は管轄権を認め裁判を進めることになった。

こうした争いのあるなか、中国は一方的に一部の岩礁を埋め立て、3000メートル級の滑走路や港湾を建設するなど、軍事拠点化を進めている。これによって、国際法上の「航行の自由」が脅かされてはならない。

この中国の行動に対し、オバマ米大統領は先月末、「航行の自由作戦」を発動し、中国が岩礁の上に造成した人工島の周辺12カイリ(約22キロ)内にイージス駆逐艦を航行させた。「国連海洋法条約によれば、岩礁は領土ではなく、もともと公海である人工島の周辺12カイリ内の航行は自由である」と主張する。

米中両国は、9月の習近平国家主席訪米の際、南シナ海などでの不測の事態回避のために行動規範や通報制度を設ける合意をしており、航行の自由作戦発動後も、ハリス米太平洋軍司令官が訪中するなど、軍幹部の対話も重ねている。

安倍晋三首相は6日、米国の行動を支持したうえで、「開かれた自由で平和な海を守るには法の支配が貫徹されなければならない」と語り、関係国とこうした原則を確認していく姿勢を示した。

習主席は7日、シンガポールで「南シナ海情勢はおおむね平穏だ。航行や飛行の自由はこれまで問題になったことはないし、これからも問題になり得ない」と発言した。

今月は、G20(20カ国・地域)首脳会議や、APEC(アジア太平洋経済協力会議)など、国際会議で各国首脳の接する場が多い。

来年は、日本が日中韓首脳会議や、先進7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の開催国となることから、南シナ海をはじめ海洋をめぐる課題も、国際法に基づき対話による平和的解決を進める機会とすることが重要だ。

さて、10月21日の政府与党連絡会議で、安倍首相は「2017年4月からの消費税率10%引き上げ時に、軽減税率の導入が間に合うよう中小事業者の負担にも配慮しつつ、具体策をとりまとめる必要がある」と表明し、与党に協力を促した。

民自公の3党合意に基づく、消費税の逆進性緩和策は、複数税率による軽減税率の導入に絞られた。給付制度は、低所得者の側が手続きをとらねばならず、8%引き上げ時には、3~4割の人に給付が届かなかった。軽減税率は、買い物時に100%軽減効果が及ぶので、はるかに優れている。

この教訓から消費税率の引き上げ実施には、軽減税率による痛税感の緩和など、経済の勢いを削がない知恵が必要である。

中韓との関係改善のため全力サポート誓う

掲載記事2015年10月21日 (水曜日)

4634_001.jpg

このたび、公明党代表団を率いて、ソウルと北京を相次いで訪問した。日韓、日中の関係改善の流れを、いっそう確かなものにするために、与党として首脳会談の環境を整える役割がある。安倍晋三首相が、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と、中国の習近平国家主席に宛てた親書を預かっての旅となった。

朴大統領は親書を受け取った後、「韓中日首脳会談も予定されており、三国関係、そして、韓日関係が発展する契機になってほしいと思う。ソウルで安倍首相とお会いできることを楽しみにしている」と語った。

慰安婦問題などの提起もあったが、私からは「両国間にはさまざまな課題はあるが、双方の政府の努力と強い意志が解決につながる。国会、特に与党は、政府間で達した合意を支えるべきである」と述べた。

朴大統領の穏やかな笑顔と芯のある語り口からは、関係改善への強い意欲が感じられた。

中国では、まず盧溝橋にある「抗日戦争記念館」に2度目の訪問をした。日本のジャーナリストから今年のお盆過ぎ、「展示内容が変わっていますよ」と聞いたので、自分の目で確かめようと思ったからだ。注目したのは、国交正常化後の日中関係発展の展示だ。

2010年の訪問時と変わっていたのは、昨年の北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)で、安倍首相と習主席が握手を交わした写真が解説付きで加わっていたことだ。私と習主席(=当時は総書記)が13年1月に会談した写真も並んで展示されていた。安倍首相による「戦後70年談話」が出された後も、この展示が継続している。

館長の求めに応じて、私は記帳簿に「歴史を忘れず、平和を誓い、未来を創る」と記した。両国が力を合わせて、創造的に未来を建設していくことが大切だ。

北京でのアジア政党国際会議で、私はスピーチを行った。その後、習主席はグループ会見に臨む出席者代表を握手で迎えたが、私と最も長く言葉を交わした。安倍首相の親書を手渡して、「東京の桜をご覧いただきたいと願っています」と伝えた。習主席は、通訳の言葉を聞きながら、にっこりとうなずいていた。

日中韓それぞれのリーダーが、対話を重ねていくことこそ、信頼と安定をもたらす基礎である。今後の努力を期待したい。

海外訪問中に、第3次安倍改造内閣がスタートした。内閣の骨格を担う主要閣僚9人は続投となり、「新3本の矢」を射る推進力として9人を新任とした。

注目の「1億総活躍担当相」には、加藤勝信氏が抜擢された。官房副長官として発揮した、手堅い手腕とバランス感覚が生きるといい。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の大筋合意に絡む国内対策で、農政に明るい森山裕農水相の起用も期待される。

わが党からは、石井啓一国交相が、前任の太田昭宏氏からバトンタッチした。旧建設省出身で、政調会長を6年間務めた幅広い政策通であり、次世代の担い手でもある。

政府与党、気合一新で国民のために働きたい。

平成27年(2015年)10月21日(20日発行)付 夕刊フジ掲載】

近く中韓訪問 関係改善に努力

掲載記事2015年10月07日 (水曜日)

151007zubatto1.jpg

このたび、私は公明党代表団を率いて、7日~9日に韓国のソウルを、13日~16日に中国の北京をそれぞれ訪問する。私の訪韓は2010年11月以来、訪中は13年1月以来である。

安倍晋三首相の「戦後70年談話」は内外でおおむね妥当な評価を受け、日本と中韓の関係は改善の方向にある。日中韓首脳会談が10月末にも開催が模索されるなか、この機を逃さず中韓との関係を改善し首脳会談を実現させていくことが重要であり、与党としてその環境を整えていく役割がある。

また、安全保障関連法制が成立したことから、日米同盟の抑止力を高めることが、地域の安定に寄与し、対話と交流によって課題を解決していくことの重要性を確認する機会にしたい。

公明党は、両国と長年にわたる交流を重ね信頼関係を築いてきた。その継続性のなかで行われる訪問でもある。

この度の訪韓は、韓国国会の副議長から昨年招待を受けたのがきっかけである。国会正副議長や与党セヌリ党党首など、政党関係者との交流を深めたい。

翌週の訪中では、北京で開催される「アジア政党国際会議」でスピーチを依頼されている。シルクロードをテーマにして今日的な人や物の交流の意義を探ろうというものだ。この機会に、中国対外連絡部の王家瑞部長をはじめ中国共産党の要人とも交流したい。

米アトランタで開かれていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉は、参加12カ国の閣僚会議で、ようやく「大筋合意」に至った。アジア太平洋地域に経済規模で世界の4割、貿易額は世界の3分の1を占める巨大経済圏が誕生する。

輸出入の垣根が低くなり、国際的なビジネスのチャンスが広がる。少子高齢化の進行により労働人口の減少していく日本にとっては大きなメリットが期待できる。

半面、日本の農業など国内産業への影響に配慮を求める国会決議を踏まえて、その趣旨が守られているか精査していく必要がある。政府には、TPPの意義と合意の内容を積極的に国民に説明していくことを求めたい。

さて、内閣改造・自民党役員人事が7日に行われる。主要閣僚や自民党5役が続投すると伝えられる。公明党の意向は5日の党首会談で安倍首相に伝えた。人事は任命権者である安倍首相の判断に委ねられている。

これまでの政権運営の安定感を保ちながら、アベノミクスの「第2ステージ」を担う新しい推進力も期待したい。政権にとっては、来年夏の参院選で国民の評価につながるような政策を推進できる布陣になることが望ましい。

平成27年(2015年)10月6日(5日発行)付 夕刊フジ掲載】

← 次の5件 1  2  3  4  5  6  7  8  9  10 前の5件 →

↑ページ上部へ戻る