背景にあるのは「対話外交の推進」

掲載記事2015年08月25日 (火曜日)

150825zubatto.jpgこのところ、報道機関の世論調査で、安倍晋三内閣の支持率が回復している。テレビ朝日系のANNが6・3ポイント(22、23日)、共同通信が5・5ポイント(14、15日)、産経新聞・FNNが3・8ポイント(15、16日)、読売新聞が2ポイント(15、16日)と、それぞれ上昇した。7月の調査では、安全保障関連法案の衆院採決などを受けて、軒並み下落していたので、下げ止まりの様相だ。

この要因は、14日に発表した「戦後70年談話」が、国内外から比較的高い評価を受けたことが第1だ。新国立競技場白紙見直しの決断や、安保法案を一貫して、丁寧に説明している努力なども挙げてよいだろう。

「戦後70年談話」は、幅広くバランスをとる配慮がある。いわゆる4つのキーワード(侵略、植民地支配、痛切な反省、心からのおわび)は、すべて盛り込まれた。安倍首相の「主語がない」との批判もあるが、「こうした歴代内閣の立場は、今後も揺るぎない」と決めたのは安倍内閣であり、ここに隠れた主語があるとみた方がよい。

しかも、閣議決定という責任ある形にしたことにより、「○○首相談話」ではなく、日本の内閣の立場を「客観化」したところに重要な意義があると見るべきだ。

「私たちの先の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との部分だけを取り上げる論調があるが、大事なのは、その後の「しかし、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」との表現とセットでとらえることだ。

安保法案は、論戦が参院に移ってから、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなっている事実を指摘し、立法の背景を丁寧に説明するようになった。これは、特定国の脅威をあおるのではなく、事実に基づいて、「戦争を未然に防止する」仕組みを作るためである。

これによって、対話で課題を解決する外交を推進することにつながる。

政府与党は、内閣支持率に一喜一憂することなく、誠実に国民に向き合うべきである。

朝鮮半島の南北軍事境界線付近で20日、砲撃戦が行われた。22日からは板門店(パンムンジョム)で、南北高官が事態解決のため協議を続けており、今後も注視する必要がある。

思い出すのは、5年前、私が訪韓日程を終えて仁川(インチョン)国際空港を離陸した直後、北朝鮮が韓国・延坪島(ヨンピョンド)をいきなり砲撃し、死傷者を出したことだ。韓国には約3万6000人の日本人が暮らし、北朝鮮には数多くの拉致被害者がとらわれたままであることを、忘れてはならない。

21日の参院平和安全法制特別委員会で、この問題をだれも取り上げなかったのは、いささか敏感さに欠ける。

ようやく、24日の参院予算委員会の質疑で、岸田文雄外相は「北朝鮮は挑発行動を自制すべきであり、南北高官協議が緊張緩和につながることを期待する」と表明した。

緊張感を持って、政治の責任を果たさなければならない。

[平成27年(2015年)8月27日(26日発行)付 夕刊フジ掲載]

戦後70年、近隣諸国と真の「和解」を

掲載記事2015年08月11日 (火曜日)

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まもなく、戦後70年目の8月15日を迎える。戦争の犠牲となった方々を心から追悼し、今日の安定と繁栄を築いた先人の努力に感謝し、今後とも続く平和を世界の人々とともに祈りたい。

広島では6日に「原爆死没者慰霊式・平和祈念式」が、長崎では9日に「原爆犠牲者慰霊平和祈念式典」が行われた。安倍晋三首相は「非核三原則を堅持しつつ、『核兵器のない世界』の実現に向け、国際社会の核軍縮の取り組みを主導していく」とあいさつした。唯一の戦争被爆国として、首相とともに責任を共有したい。

今日、平均年齢80歳を超えた被爆者を含め、戦時体験者の声は貴重である。戦後生まれの私は、学徒出陣の父、勤労奉仕に明け暮れた母から体験を聞いた。戦死した叔父もいる。故郷の茨城県日立市は空爆と艦砲射撃で壊滅した。1トン爆弾の不発弾を展示した、すり鉢状の大穴の遺構があった。米軍機の機銃掃射をかいくぐった教師の話も聞いた。

悲劇を繰り返さないために、戦争の悲惨な実相を知り、後世に伝え残さなくてはならない。同時に、日本が国策を誤り、アジアの人々に侵略や植民地支配による多大な苦痛と損害をもたらしたことも忘れてはならない。

戦後、わが国は日本国憲法の下に、自由と人権を重んじ、民主主義を育て、平和主義と国際協調に徹する道を歩んできた。悲しみや苦難を乗り越えて、懸命に努力した先人のおかげで、復興を成し遂げ、高度成長を経て今日の繁栄を築くことができた。これを支えてくれた米国をはじめとする多くの国々の協力に感謝しなければならない。

戦後の日本の歩みに自信を持ち、これからも誇りを胸に進んでいきたい。そのためには、日本人一人ひとりが、これまでの歩みを虚心に省みて、近隣諸国との真の「和解」を成し遂げ、安定した未来の関係をつくりあげる努力をしなければならない。

安倍首相は14日に「戦後70年談話」を発表する予定だ。かねてから、談話を出すにあたっては「公明党とも相談していく」と語っていた。首相は7日、私や自公両党の幹事長、菅義偉官房長官と懇談の機会を持った。その際、談話の内容を説明し、公明党の意見を参考にして、14日に閣議決定することを明言した。

公明党側からは「安倍首相は『歴代内閣の談話を継承する』と言ってきたのだから、その意味が国民にも国際社会にも伝わるようにしてください」と述べ、「中国、韓国と関係改善に資する内容にしていただきたい」と要望した。首相の説明と、われわれの考え方に大きな隔たりはないと感じている。

6日には、安倍首相が依頼した有識者会議「21世紀構想懇談会」(西室泰三座長=日本郵政社長)がまとめた報告書が公表された。首相の談話はこの報告書をベースにしている。

歴代内閣の談話を継承しつつ、後世の人々が内外ともに納得できる談話を期待したい。

 

安保法案議論議論たっぷり時間を

掲載記事2015年07月28日 (火曜日)

誤解招き、理不尽な批判には反論

150728zubatto.jpg2020年東京五輪の開会式(同年7月24日)まで5年を切った。

安倍晋三首相は17日、新国立競技場の建設計画を「白紙に戻し、ゼロベースで見直す」と決断した。事前に報告を受けていた私は、首相の記者会見後、コメントを求められて、「安倍首相の決断を尊重する。五輪・パラリンピックを内外の人に喜んでもらえるよう、政府与党として取り組んでいく」と応じた。

従来の計画については、2520億円まで膨張した総工費と、不透明な決定過程に国民の批判が高まっていただけに、安倍首相の決断は「英断」といってよい。世論調査でも、国民はこれを歓迎している。

とはいえ、19年開催のラグビーW杯への使用を断念することになり、関係者の落胆も大きいようだ。2大イベント推進のシンボルとみられた、森喜朗元首相が「悪役」を引き受けているようにも見えて、頭が下がる。

安倍首相は大会推進本部の初会合で、「世界中の多くの人々が夢と希望を分かち合える、歴史に残る大会にしたい」とあいさつした。限られた時間で、コストを抑制し、立派な競技場を造りあげるのは容易ではない。政府・与党が気持ちを一新し、国と東京都が協力して大会の成功に邁進(まいしん)したい。

さて、安全保障関連法案の審議が27日、参院でスタートした。国民の理解を進めるために、衆院審議から教訓を得ながら、分かりやすい議論を展開しなければならない。

衆院での115時間の審議のうち、与党は1割の時間配分にとどまった。つまり9割が野党だったわけだ。参院では、与党の質疑を通じて、法案の本来の趣旨や必要性をていねいに説明すべきだ。一部野党によるレッテル貼りや誤解を解き、理不尽な批判には反論することが必要であり、与党はたっぷり時間を取った方がいい。

先日、某大手新聞に興味深い記事が載っていた。日本の名だたる憲法学者へのアンケート結果を解説してあり、「自衛隊は違憲か」との問いに、122人中77人が「違憲または違憲の可能性あり」と答えている。実に63%にのぼる。私は「いまだにそうなのか」と思った。

自衛隊は、国内での災害派遣や国際貢献としてのPKOや国際緊急援助など、長い間実績を重ね、内外に高い評価を得ている。有事への備えも努力してきた。政府・与党は、憲法第13条による「人権を尊重する国政の責任」と、第9条の平和主義のもとで、自衛隊の活用と歯止めを時代の変化に対応しながら適切に運用してきた。

学者の大半が、いまだに「自衛隊違憲」という立場では、自衛隊の活用も歯止めも、現実的な議論ができなくなってしまう。この域を出ない政党の主張もある。

中国はこの1年間で、東シナ海の海上プラットホームを倍増させた。こうした安保環境の急激な変化を知れば、政権を担当した経験のある政党や政治家は、対案を含めて誠実に向き合うべきではないのか。

認識の共有から合意の接点さぐる〜安保関連法案の採決間近〜

掲載記事2015年07月15日 (水曜日)

150714zubatto.jpg今週、山場を迎えそうな国会審議のテーマが2つある。1つは、「一票の格差」是正に向けた参院の選挙制度改革であり、もう1つは、安全保障関連法案の衆院平和安全法制特別委員会における裁決の行方である。

前者については先週末、唯一自らの案を出していなかった自民党がようやく重い腰を上げて党内をまとめ、維新の党など野党4党が提案していた、島根・鳥取と高知・徳島の2合区を含む「10増10減案」で合意した。

与党で合意形成を進めるはずが、自民党は党内をまとめるのに苦労していた。公明党は「座して違憲を待つ」ことを回避するために、先手を打った。本来の11ブロック案を棚に上げて、格差2倍未満の「10合区6増6減案」を次善の案として提案した。民主党もこの案に同調し、自民党に決断をせまった。

自民党が「合区」を容認し、一歩踏み出した。しかし、自民党など5党の案は、一票の格差が3倍近いものであり、憲法の要請に応えたものとはいえない。最高裁から指摘されてきた「違憲状態」を脱する取り組みが期待されている。もう一歩、格差を縮める努力ができないものか。

13日の与野党協議では、合意の一本化はできなかった。いよいよ法案提出へと向かうが、各党が政党としての判断を経て制度を決めることになろう。

さて、安保法案をめぐる衆院特別委員会の審議は、13日で実質105時間を超えた。中央公聴会を終えたので、いつ採決してもよいというのがこれまでのルールだ。

しかし、先週、維新の党と民主党から対案が出されたので、10日と13日、対案を含めて審議が重ねられた。14日には、維新と与党の修正協議がなされている。

維新の自衛権の考え方は、政府案より抑制的だが、幹部によって言動が異なる。国際法上は「個別的自衛権の延長」といい、「集団的自衛権の評価を否定しない」ともいい、不明確である。重要な基本認識を共有してもらうことが合意の接点をさぐる前提となろう。

民主と維新が共同で「領域警備法」を出した。この案は、昨年の政府の閣議決定以前から示されていた案であり、その考え方を取らない閣議決定をした。国会審議で、野党案に説得力があるとの議論には至っていないようだ。

いずれにしても、共産党や社民党以外は「わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、何らかの対応が必要だ」との認識は共有している。だからこそ、対案を出したのであろう。合意の接点を模索しつつも、議論は成熟しつつあり採決は近い。

(■ 7月14日掲載)

暴力肯定、民主党の「抵抗茶番劇」

掲載記事2015年06月17日 (水曜日)

150616zubatto3.jpg衆院与野党国対委員長会談が15日開かれ、自民党の佐藤勉国対委員長は「厚生労働委員会などにおいて、野党の一部と合意のできない状況で進めたことは遺憾であった。正常化に向けて協力をお願いする」と述べた。先週末に荒れた国会審議は収拾に向かった。

先週12日、衆院厚労委で、労働者派遣法改正案の集中審議が開催された際、民主党と共産党は「年金問題の議論が先だ」と主張して採決に反対した。

あろうことか、民主党議員らは渡辺博道委員長の入室を阻止しようともみ合いになった。審議が始まると、民主党議員は室内に立って声を荒げ、民主党の質問時間になっても着席せず、質疑時間が終了した。明らかな審議拒否である。結局、採決は見送られた。

渡辺委員長は、入室時に「首に手をかけられた」といい、診断書を示して「全治2週間の頸椎(けいつい)捻挫を負った」と訴え、「議論をしないで、暴力で自分たちの思いを成し遂げようということでは、国会の機能は果たせない」と憤りをぶつけた。

民主党の長妻昭代表代行が14日、フジテレビの報道番組で「お行儀よく法律を通せば国益にかなわない」と言い放ち、暴力による妨害を肯定したのには恐れ入る。同番組では、民主党議員が作成したという「委員長にとびかかるのは厚労委メンバーのみ」と書かれたメモまで紹介された。

民主党が厚労委のみならず、平和安全特別委員会など複数の委員会で欠席したのも理解に苦しむ。これでは、「抵抗茶番劇」と国民に見透かされてしまうだろう。

さて、平和安全法制(安全保障関連法案)をめぐり、先の衆院憲法審査会に参考人として呼ばれた憲法学者3人が「違憲」と述べたことが話題となっている。だが、驚くには当たらない。

もともと、「違憲」と主張している学者を呼んだのだから、そう言うに決まっている。野党や一部のメディアは、与党である自民党が呼んだ参考人は「合憲」を主張するはずだとの先入観に反したことを問題にしているにすぎない。真の問題は「違憲」の主張に説得力があるかだ。

私が大学生だった40年ほど前、憲法学の権威であった2人の教授は、いずれも「自衛隊は違憲」と主張されていた。当時でも、今回の平和安全法制の基礎となる「日米安保条約」「最高裁砂川判決」「自衛権に関する昭和47(1972)年政府見解」「自衛隊を容認する世論」は出そろっていたから、教授の主張に違和感を覚えた。

政府は、国民の人権は「立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」との憲法13条の規定を根拠として、必要最小限の自衛の措置を認めてきた。人権を最も損なうのは日本国民への武力攻撃であるから、それを排除する反撃は必要最小限許されるとの考え方である。

砂川判決で「裁判所は自衛の措置の憲法判断はしない。政府と国会に任せる」とされたことから、「国政の上で最大の尊重」をする責任は政府と国会にある。

そのうえで、学者の意見は説得力のあるものを参考にすればよい。平和安全法制を「合憲」とする学者はいるのだから。

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