甘利氏辞任で後任は政権の命運握る

掲載記事2016年02月04日 (木曜日)

0685_001.jpg甘利明・前経済財政担当相が先月28日、辞任した。「TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)大筋合意」の立役者だっただけに、4日の協定署名を果たせなかったのは大変残念である。何より、当人の悔しさが、記者会見でにじませた涙に現れていた。

私が公明党の政調会長代理をしていた10年ほど前、自民党の政調会長代理であった甘利氏とテレビの討論番組などで与党側として同席することがあった。経済問題をはじめ、安定感のある対応ぶりに感心したものだ。

安倍晋三首相の信任も厚く、アベノミクスの推進役として、内閣で重責を果たしてきた。安倍政権は「新3本の矢」を射て、成長を持続し、少子高齢化に正面から取り組むべく「成長と分配の好循環」へ向かおうとしている。TPPは今後の成長を牽引する柱の1つだ。

安倍首相は、施政方針演説でそうした挑戦の意欲を明確にした。これからの予算委員会に臨むにあたり、痛手を最小限にとどめ、態勢を立て直して、日本経済と国民生活の将来がかかる正念場に立ち向かう必要がある。

報道各社が先週末に行った世論調査では、内閣支持率は下がっていない。安倍首相が「甘利氏の任命責任は私にある」と述べているにもかかわらず、世論は「責任はあるが、内外の懸案にしっかり取り組むことが優先だ」との叱咤(しった)と受け止めたい。

政権は襟を正し、与党も一体となって、この危機を乗り越えていかなければならない。

一方で、甘利氏は自らの政治資金については説明責任を果たしたが、秘書らの行為については説明すべきことが残っている。報道によれば、告発者の言い分と食い違う点もあり、分からないことも多い。調査を尽くしたうえで、説明責任を全うすることが大切だ。

政治資金をめぐる事件が、現在の小選挙区比例代表並立制を生むきっかけとなった。だが、小選挙区制でも「いい人だけ付き合っているだけでは選挙は落ちてしまう」と甘利氏自身が語ったように、再発防止のためには幅広い検討が必要だ。国民の信頼を取り戻す建設的な議論が求められる。

甘利氏の後任として、石原伸晃氏が任命された。閣僚経験も豊富で、幹事長や政調会長も歴任した〝大物〟である。

安倍首相は、甘利氏の辞任表明直後、「ご迷惑をかけて申し訳ない。後任は石原氏としたい。今日中に任命を終える」と私に連絡してきた。素早い転換である。私は「しっかり支えるので頑張ってほしい」と応じた。

この局面での石原氏の役割は極めて重い。政権の命運を握っていると言っても過言ではなく、言動に細心の注意を払ってもらいたい。TPPの交渉経過は政府代表団が共有しているので、その成果を引き継いで十分対応できるだろう。経済と財政のバランスをとった運営を期待する。(公明党代表)

【2016年2月3日(2日発行)夕刊フジ掲載】

国際社会と連携し制裁強化を

掲載記事2016年01月21日 (木曜日)

〜北が4回目の核実験強行〜

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北朝鮮は今月6日、4回目の核実験を強行した。累次の国連安保理決議に違反する暴挙であり、断じて許されるものではない。国際社会として断固たる強いメッセージを送り、新たな挑発を防ぐ必要がある。

日本は国際社会と連携し、実効的措置により制裁強化を図る、新たな安保理決議の採択を目指すとともに、アジア各国の核不拡散分野における協力も進めるべきである。

核実験も4回目ともなれば、核・ミサイル開発が継続していることの脅威を示したといってよい。技術の向上もあなどれない。

16日には都内で、日米韓の外務次官協議も行われた。3カ国を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増している。北朝鮮問題などに3カ国が緊密に連携し、中国やロシアとも協力して、国際社会の対応を主導していくことを確認した。

北朝鮮の暴挙に対し、日米韓の結束した対応が不可欠となっている現実を踏まえれば、政府・与党が昨年の通常国会で、日米防衛協力のガイドラインを改定し、安全保障法制を成立させていた先見性を改めて感じる。

一方、安保法制廃止を叫ぶ日本共産党の志位和夫委員長は昨年11月7日、テレビ番組で「北朝鮮にリアルな危険があるのではない」との認識を示していた。国連安保理決議による制裁が続くなか、妥当な認識だろうか。

今回の核実験を受け、衆参国会は直ちに非難決議を出したが、共産党は参院の決議案提出者となった際、北朝鮮の核開発は「北東アジアのみならず国際社会全体の平和と安定を脅かすもの」との認識を示した。志位氏の今月6日の談話では「脅威」との表現は使わなかったが、同党の小池晃参院議員は8日の記者会見で「重大な脅威だ。間違いない」と明言した。

この認識の変化はどういうことなのか。「重大な脅威」に対してどう行動していくのか。説得力ある説明はなされていない。

さて、国会論戦は、臨時国会を要求していたわりには低調だ。

衆院予算委員会で、民主党議員が安倍晋三首相に対し、「拉致問題を利用してのし上がったのか」などと質問した。安倍首相は猛反発していたが、国会で選ばれた行政府のトップに失礼だ。拉致問題を将来的にどう解決するかといった建設的な議論もなかった。

また、実質賃金をめぐる、安倍首相の「パート25万円」という例え話に、「雇用実態と異なる」などとかみつくばかりでは、「木を見て森を見ず」だ。安倍首相は、景気が回復して雇用が増加する局面では、まずパートで働く人が増えて家計収入も増えるが、1人当たりの平均賃金が低く出るということを、「安倍家の収入」に例えて説明したのだ。

議論すべきは、正規雇用に結びつけ、制度の壁をなくして、手取りを増やす方法だろう。

国民が納得する、かみ合った論戦を期待したい。(公明党代表)

【2016年1月20日(19日発行)夕刊フジ掲載】

※[お詫び]システムトラブルにより、本記事のホームページへの掲載が遅れました事をお詫び申し上げます。

後世から「輝かしい日本をもたらした」といわれる年に

掲載記事2016年01月06日 (水曜日)

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慰安婦問題で日韓合意〜両政府は着実に実行を〜

読者のみなさま、あらためて新年おめでとうございます。今年もズバッといきます。よろしくお願いいたします。

通常国会が4日、召集された。いきなりエンジン全開で、立ち上がりの早い仕事始めとなった。

一方、昨年末は、クリスマスの後が週末と重なり、余裕がある仕事納めになったのではないか。日ごろから家庭を空けっ放しの私は、せめてもの罪滅ぼしに、男手のいる家事を精いっぱい引き受けた。「家庭の幸福は妻への降伏」と言う。

例年、障子の張替えは手間のかかる仕事だ。障子に水をかけて紙をはがし、桟まで雑巾できれいに拭いて干し、乾いたところでノリを塗って障子紙を貼る。ノリが乾いたら端をきれいに切りそろえて、紙に霧吹きをして乾かすと、ピンと張って出来上がりとなる。これを数枚繰り返すと、ほぼ半日仕事となった。

普段、マイクぐらいしか握らない手に、雑巾とタワシに持って奮闘したため、後から筋肉痛が襲ってきた。

さて、仕事納めの28日、岸田文雄外相が訪韓し、慰安婦問題で日韓の合意を結んだ。女性の名誉と尊厳を傷つけた問題に、安倍晋三首相は心からおわびと反省の気持ちを表明した。

日本政府は、韓国政府がつくる支援事業を行う財団に10億円ほどの拠出をする予算措置をとり、協力して取り組む。これらをもって「最終的、不可逆的な解決とする」と確認した。画期的合意であり、これを着実に実行することが両国政府に求められる。

今年は申(さる)年だ。過去に申年は、現代にも影響する大きな出来事か起きている。1872年の富岡製糸場操業開始や、96年のアテネ第1回夏季五輪、1951年の国際連合加盟などだ。富岡製糸場は今日の経済大国を築き、多数のノーベル賞受賞者を出す出発点となった。

昨年末、日本が初めて113番目の元素を発見したことが認められ、国際機関から「命名権」を与えられた。基礎科学の厚みは日本の経済成長、競争力を生み出す源泉になる。

アテネ以来、五輪は「平和の祭典」であるとともに、「経済成長の牽引(けんいん)力」になってきた。2018年の平昌(ピョンチャン)冬季、20年の東京夏季、22年の北京冬季と続く、五輪とパラリンピックを、平和と成長の好機にしたい。

今年は国連加盟から60年目となる。実は1920年、国際連盟に加入したのも申年だったが、後に脱退して国際的孤立を招いた。その反省から戦後の平和国家への歩みが定着した。

今年は、国連安保理非常任理事国入り、日中韓首脳会談の日本開催、伊勢志摩サミットなど外交の年になる。また、7月には「18歳選挙権」が実施される参院選が行われる。後世振り返って、「あの申年が今日の輝かしい日本をもたらした」といわれる年にしたい。(公明党代表)

【2016年1月6日(5日発行)夕刊フジ掲載】

今後の日韓関係改善へ教訓とすべきだ

掲載記事2015年12月24日 (木曜日)

0391_001 - バージョン 2.jpg産経前ソウル支局長に無罪判決

韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領の名誉をコラムで傷つけたとして在宅起訴された産経新聞の加藤達也前ソウル支局長に17日、無罪の判決が出た。これで、日韓関係の改善を妨げていたトゲが1つ抜けた。

公判では冒頭、韓国外務省が日本側の善処の要望を考慮するよう、裁判所に求めていたことが明らかにされた。司法の独立が危ぶまれる異例の事態である。裁判所は外交的配慮を加えて無罪とした。妥当な結論である。

判決では、3つの顔が立てられている。

第1は、コラムで取り上げた朴大統領に関する「噂」は虚偽であるとして、大統領の顔を立てた。第2に、コラムは韓国の政治状況を伝える意図であり、名誉を傷つける意図ではなかったとして、前ソウル支局長の顔を立てた。最後は、韓国は民主主義のもとで「言論の自由」が重視されるとして、日本や国際社会に証を立てた。

ともかく、これ以上の関係悪化は避けられてよかった。

11月初め、ソウルで日韓首脳会談が行われ、関係改善への流れが進み始めた矢先である。靖国神社に爆発物を仕掛けた韓国人が逮捕され、「また、緊張が高まるか」と懸念されただけに、この無罪判決で見せた深慮を教訓として生かすべきだ。

日韓関係の改善を妨げるトゲは「慰安婦問題」「竹島問題」「元徴用工問題」「水産物輸入規制問題」など、他にもある。私が10月に朴大統領と会ったときも述べたが、「日韓双方が努力して、解決への強い意志を持ってやり抜く」ことが重要である。関係改善への流れを止めてはならない。

本年も残りわずかとなった。振り返ると、歴史的に重要な政治的前進が図られた年であった。

まず、18歳選挙権を実現する公職選挙法が6月に成立した。1925年に25歳以上のすべての男子が選挙権を得て、45年に20歳以上のすべての男女に拡大されて以来の大改正である。来年夏の参院選から実施される。

9月に成立した安全保障法制の成立も大きい。国論を二分するテーマだったが、安保法制懇の報告、与党内論議を経た閣議決定、法案の国会審議を通じた与野党修正により、幅広い合意が形成された。民主党が安全保障環境の変化に共通認識を持ちながら、建設的な議論ができなかったのは残念だった。

これにより、憲法に基づき、戦争を防止し、国際社会の安定を図る、わが国の積極的平和主義を明確にできた。

さらに、8月の戦後70年談話をはじめ、政府・与党はもちろん各界の幅広い対話外交の努力によって、日中韓の関係が改善の方向に向かった。来年は日本で首脳会談が開催される。平昌(ピョンチャン)、東京、北京の五輪・パラリンピックの成功へとつなげていきたい。

12月には、消費税率10%引き上げ時に「軽減税率」を導入し、酒と外食を除く全飲食料品が軽い8%に据え置かれることに決まった。民意をくみ取った最善の結果である。

来年は、これらをさらに前進させ、デフレ脱却の道を確かにしたい。(公明党代表)

【2015年12月23日(22日発行)夕刊フジ掲載】

軽減税率は加工食品も 衆参同日選はやるべきではない

掲載記事2015年12月09日 (水曜日)

151208zubatto.jpg2017年4月の消費税率10%引き上げに合わせて「軽減税率の導入」に注目が集まる。師走の中旬を控え、来年度の税制を決める時期が迫っている。これが決まらないと、下旬に予定される歳入と歳出を合わせた来年度予算の概算も決められないからだ。しかし、与党の協議は難航している。

軽減税率は、所得に占める軽減額でみると、所得が低くなるほど軽減の効果が高くなる。消費税の欠点である逆進性を緩和する切り札だ。買い物をするときに、確実に効果を実感できる。低所得者に現金を配る手間も財源もいらない。一律にお金をもらうより、自分の消費生活に応じて軽減されるところもお仕着せにならなくてよい。

8%引き上げで、消費の低迷が長引いた。これを教訓とすれば、10%引き上げがさらに消費活動に重くのしかかることに配慮して、消費者一人ひとりの痛税感を緩和し、国民の消費全体を萎縮させないことが重要である。入るはずの消費税収が目減りすると心配するが、納税者からみれば可処分所得が消費税で目減りしない分、全体として景気への悪影響を和らげる経済対策になる。

社会保障の安定財源も足りなくなるとの主張は妥当でない。社会保障の財源は消費税だけではなく、所得税や法人税など税収全体で支えている。給料のベースアップがあれば、所得税や住民税の税収がその分安定する。企業が設備投資すれば、固定資産税が増える。自治体の住民税や固定資産税が増えて安定的になれば、国からの地方交付税が減って財政に余裕ができる。

ベースアップなどで賃金の上がった人は、所得も比較的高めである。このような人にも軽減税率の恩恵が及ぶとしても、所得税や住民税の納税額も増えているから、案外、釣り合いは取れているのである。

公明党は、以上のような軽減税率の必要性を踏まえて、国民との公約であることと、欧米で広く定着している軽減税率制度の安定性を重視している。有権者の反応は、直近の調査でも、酒を除く飲食料品を広く軽減税率の対象とすることを望む声が一番多い。消費者にとっても事業者にとっても分かりやすいからだろう。生鮮食品だけでよいとする人は少なく、弁当、総菜、のり、納豆、インスタント食品などの加工食品は欠かせないと思う人が圧倒的である。

安倍晋三首相も述べたように、「国民の理解を得て」軽減税率の導入を図ることが大切だ。このところ、与野党幹部から来年の参院選に合わせて衆院選を行う「衆参同日選」についての発言が相次いだ。衆院の解散は首相の専権事項だ。事実、安倍首相は「全く考えていない」と語った。「やる」も「やらない」も述べるはずがない。

憲法は衆参議員の任期を変えて、時点の違う民意を取り込もうとする趣旨だ。同日選は政権を不安定にするリスクも高いし、選挙協力の効果も弱まる。やるべきではない。

(公明党代表)2015年12月9日(8日発行)夕刊フジ掲載】

 

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