認識の共有から合意の接点さぐる〜安保関連法案の採決間近〜

掲載記事2015年07月15日 (水曜日)

150714zubatto.jpg今週、山場を迎えそうな国会審議のテーマが2つある。1つは、「一票の格差」是正に向けた参院の選挙制度改革であり、もう1つは、安全保障関連法案の衆院平和安全法制特別委員会における裁決の行方である。

前者については先週末、唯一自らの案を出していなかった自民党がようやく重い腰を上げて党内をまとめ、維新の党など野党4党が提案していた、島根・鳥取と高知・徳島の2合区を含む「10増10減案」で合意した。

与党で合意形成を進めるはずが、自民党は党内をまとめるのに苦労していた。公明党は「座して違憲を待つ」ことを回避するために、先手を打った。本来の11ブロック案を棚に上げて、格差2倍未満の「10合区6増6減案」を次善の案として提案した。民主党もこの案に同調し、自民党に決断をせまった。

自民党が「合区」を容認し、一歩踏み出した。しかし、自民党など5党の案は、一票の格差が3倍近いものであり、憲法の要請に応えたものとはいえない。最高裁から指摘されてきた「違憲状態」を脱する取り組みが期待されている。もう一歩、格差を縮める努力ができないものか。

13日の与野党協議では、合意の一本化はできなかった。いよいよ法案提出へと向かうが、各党が政党としての判断を経て制度を決めることになろう。

さて、安保法案をめぐる衆院特別委員会の審議は、13日で実質105時間を超えた。中央公聴会を終えたので、いつ採決してもよいというのがこれまでのルールだ。

しかし、先週、維新の党と民主党から対案が出されたので、10日と13日、対案を含めて審議が重ねられた。14日には、維新と与党の修正協議がなされている。

維新の自衛権の考え方は、政府案より抑制的だが、幹部によって言動が異なる。国際法上は「個別的自衛権の延長」といい、「集団的自衛権の評価を否定しない」ともいい、不明確である。重要な基本認識を共有してもらうことが合意の接点をさぐる前提となろう。

民主と維新が共同で「領域警備法」を出した。この案は、昨年の政府の閣議決定以前から示されていた案であり、その考え方を取らない閣議決定をした。国会審議で、野党案に説得力があるとの議論には至っていないようだ。

いずれにしても、共産党や社民党以外は「わが国を取り巻く安全保障環境は厳しさを増しており、何らかの対応が必要だ」との認識は共有している。だからこそ、対案を出したのであろう。合意の接点を模索しつつも、議論は成熟しつつあり採決は近い。

(■ 7月14日掲載)

暴力肯定、民主党の「抵抗茶番劇」

掲載記事2015年06月17日 (水曜日)

150616zubatto3.jpg衆院与野党国対委員長会談が15日開かれ、自民党の佐藤勉国対委員長は「厚生労働委員会などにおいて、野党の一部と合意のできない状況で進めたことは遺憾であった。正常化に向けて協力をお願いする」と述べた。先週末に荒れた国会審議は収拾に向かった。

先週12日、衆院厚労委で、労働者派遣法改正案の集中審議が開催された際、民主党と共産党は「年金問題の議論が先だ」と主張して採決に反対した。

あろうことか、民主党議員らは渡辺博道委員長の入室を阻止しようともみ合いになった。審議が始まると、民主党議員は室内に立って声を荒げ、民主党の質問時間になっても着席せず、質疑時間が終了した。明らかな審議拒否である。結局、採決は見送られた。

渡辺委員長は、入室時に「首に手をかけられた」といい、診断書を示して「全治2週間の頸椎(けいつい)捻挫を負った」と訴え、「議論をしないで、暴力で自分たちの思いを成し遂げようということでは、国会の機能は果たせない」と憤りをぶつけた。

民主党の長妻昭代表代行が14日、フジテレビの報道番組で「お行儀よく法律を通せば国益にかなわない」と言い放ち、暴力による妨害を肯定したのには恐れ入る。同番組では、民主党議員が作成したという「委員長にとびかかるのは厚労委メンバーのみ」と書かれたメモまで紹介された。

民主党が厚労委のみならず、平和安全特別委員会など複数の委員会で欠席したのも理解に苦しむ。これでは、「抵抗茶番劇」と国民に見透かされてしまうだろう。

さて、平和安全法制(安全保障関連法案)をめぐり、先の衆院憲法審査会に参考人として呼ばれた憲法学者3人が「違憲」と述べたことが話題となっている。だが、驚くには当たらない。

もともと、「違憲」と主張している学者を呼んだのだから、そう言うに決まっている。野党や一部のメディアは、与党である自民党が呼んだ参考人は「合憲」を主張するはずだとの先入観に反したことを問題にしているにすぎない。真の問題は「違憲」の主張に説得力があるかだ。

私が大学生だった40年ほど前、憲法学の権威であった2人の教授は、いずれも「自衛隊は違憲」と主張されていた。当時でも、今回の平和安全法制の基礎となる「日米安保条約」「最高裁砂川判決」「自衛権に関する昭和47(1972)年政府見解」「自衛隊を容認する世論」は出そろっていたから、教授の主張に違和感を覚えた。

政府は、国民の人権は「立法その他の国政の上で最大の尊重を必要とする」との憲法13条の規定を根拠として、必要最小限の自衛の措置を認めてきた。人権を最も損なうのは日本国民への武力攻撃であるから、それを排除する反撃は必要最小限許されるとの考え方である。

砂川判決で「裁判所は自衛の措置の憲法判断はしない。政府と国会に任せる」とされたことから、「国政の上で最大の尊重」をする責任は政府と国会にある。

そのうえで、学者の意見は説得力のあるものを参考にすればよい。平和安全法制を「合憲」とする学者はいるのだから。

口永良部島の噴火は政府与党で結束して対応

掲載記事2015年06月03日 (水曜日)

150602zubatto.jpg鹿児島県・口永良部島の「新岳」で5月29日、爆発的噴火が発生した。噴煙は一時9000メートルまで達し、火砕流が集落にも迫った。気象庁が噴火警戒レベルを5(避難)に引き上げたため、地元の同県屋久島町は、全島避難指示を出した。

島民137人は、フェリーと海上保安庁や消防のヘリに分乗し、全員が約20キロ離れた屋久島に避難した。やけどを負った人と、体調不良を訴えた人が1人ずついたが、犠牲者ゼロで何とか公民館や親戚(しんせき)宅などへ身を寄せた。

気象庁は、今後も噴火が発生する可能性があり、降雨による土石流の発生も懸念されるため、「引き続き厳重な警戒と避難の対応が必要である」としている。専門家からは「マグマの大半が地下に残り、今後も大きな噴火が起きる恐れがあり、活動が長期化する可能性がある」との指摘も出ている。

私は噴火発生直後の29日昼、安倍晋三首相と党首会談を行い、「政府与党で結束して対応する方針」を確認した。その際、私は、東京都・三宅島の噴火災害による全島避難の経験から「島民の安全確保と避難先での生活支援に万全を期し、島の住宅などの財産保全を含めて帰島できる状況に至るまでの継続的支援」を要請した。

1日には、噴火も止まり、天候も回復したことから、島民代表11人の一時帰島が許された。住宅の火の元や戸締まりを確認し、家畜に餌と水をやり、貴重品などを持ち帰った。

今後、子供たちを学校へ配属し、お年寄りの健康状態を守り、町営住宅や雇用促進住宅などを活用して、当面の居住先を提供しなければならない。必要があれば仮設住宅の建設も検討する。公明党の議員も避難先に駆けつけたが、役所の担当者とともに、島民のきめ細かな相談に応じ、当面の不安を解消していくことが大切である。

気になるのは、列島各地で活発化する火山活動や地震との関係である。

東京都・小笠原諸島で先月30日に発生した地震は、マグニチュード8・1、震源は過去最深の682キロを記録した。小笠原・母島と神奈川県二宮町の震度5強をはじめ、関東を中心に列島の広範囲に揺れが及んだ。

海底下のプレート境界に沿って遠い地域に強い揺れが伝わる「異常震域」と呼ばれる珍しい現象といわれる。高層ビルのエレベーターが多数停止し、土曜日の夜でなければ大混乱になっていた可能性も指摘され、新たな課題を提起した。幅広い検討を要する。

さて、平和安全法制の国会審議が始まった。序盤のテレビ中継では、野党議員と政府答弁者がそれぞれの「印象づけ」を狙った応酬が気になった。与党の質問者は、分かりやすいやり取りで国民の理解を促すことを心がけていたが、時間が不十分だった。国民の命と平和な暮らしがかかった重要な法案である。

安倍首相をはじめ政府側は「謙虚で丁寧な」答弁に徹してもらいたい。私はそのことも党首会談で念を押した。

安保法制に「戦争法案」のレッテル

掲載記事2015年05月21日 (木曜日)

〜政府と国会が責任もって払拭〜

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政府は先週15日、25回に及ぶ与党協議の結果を受けて、安保法制に関連する2本の法案を閣議決定し、国会に提出した。1990年の初当選以来、私の政治経験のなかで「自衛隊のあり方」を論ずる3度目の大きな機会となる。

初当選してまもなく、イラクのクウェート侵入から湾岸戦争が起こった。冷戦終了後、世界は地域紛争を止め、予防する国際協力を模索した。

日本は、自衛隊を含む国際貢献としてPKO協力法を成立させた。国際社会が軍隊を含めた役割分担で協力していくなか、日本は自衛隊を一切関わらせないという一国平和主義をとらず、武力以外の能力は活用していこうという「国際協調の道」をとることとなった。

このとき、一部の野党やメディアは「戦争に巻き込まれる」などと声高にレッテルを貼ったが、今日、日本のPKO協力は、世界からも国民からも高い評価を得ている。

2度目は、今世紀初めの「有事立法」のときだ。自衛隊発足後、日本に武力攻撃があった場合、どのような基準と手続きで自衛隊を使うかという有事立法は長らく作られなかった。圧倒的な米軍の力に頼って、自衛隊を動かして「日米安保」を機能させる切実感が乏しかったともいえる。

しかし、弾道ミサイルや核開発を進めて、実際に、日本に向けてミサイルを飛ばそうとする近隣国が現れてきた。自衛隊は、力の空白を埋めるだけで役割を担っていた時代から、有事に動かして日米安保が機能する仕組みを整えることで、「抑止力」を備える時代に転換した。

今回は、弾道ミサイル開発などがさらに進み、国を選ばないテロの犠牲が日本人にもおよび、経済力を蓄えた国々の軍事力を示す行動が活溌になる現実に対応した、「抑止力」の備えと、「国際協力」の仕組みが必要とされているのである。

公明党は与党協議で、専守防衛の基本姿勢を守り、武力行使を日本防衛に限定した。国際貢献は、武力行使や武力行使と一体となる活動を禁じて、自衛隊員の安全を確保し、国際ルールにのっとって参加する判断を政府と国会が責任をもって決める歯止めを設けた。

「戦争法案」や「戦争に巻き込まれる」という批判は、またしても国民の命や平和な暮らしを脅かす現実に、政府が責任を持つという憲法の精神を省みないレッテル貼りなのである。

このたび、「大阪都構想」が住民投票で否定された。市長と議会の対立の繰り返しを、大阪市民が住民投票で自ら出した結論は尊重しなければならない。生き残った政令指定都市「大阪市」をどうするかは、賛成票に込められた思いもくみ取る必要がある。

国政課題での合意形成は、与党として幅広く努力することに変わりはない。

菅官房長官・翁長知事会談が実現

掲載記事2015年04月08日 (水曜日)

政府は丁寧な対話による解決に努力を

150407zubatto.jpg菅義偉官房長官と、沖縄県の翁長雄志知事が5日、那覇市内で初めて会談した。官邸を空けることがめったにない官房長官であるが、米軍の「西普天間住宅地区」返還式典出席にあたり、実現させた。

菅氏は「日米同盟の抑止力維持、そして危険除去を考えたときに辺野古移設は唯一の解決策と考えている」と訴え、会談後「国と沖縄県が話し合いを進めていく第一歩となった。基地負担軽減対策とか振興策は、県と連携していく必要がある」との考えを示した。

翁長氏は「辺野古の新基地は絶対に建設することができないとの確信を持っている。上から目線の『粛々』という言葉を使えば使うほど、県民の心は離れていくのではないか」と反論したが、会談後「会話は続けるということだ」と語った。

両者の主張は平行線に終わった。翁長氏は、安倍晋三首相との会談も求めており、官邸は対話を続ける方向では一致するものの、タイミングや内容は慎重に模索するものと思われる。

問題の出発点は、住宅地の真ん中にあり、「世界一危険」といわれた普天間飛行場(沖縄県宜野湾市)の危険除去にあり、この危険を固定化させないことが重要だ。

政府は、長い検討の経過をたどって名護市辺野古移設を沖縄側といったんは着地させたが、民主党政権の対応のまずさもあって、信頼関係を損なった。安倍政権は信頼関係を再構築しながら、普天間飛行場の辺野古移設と基地負担軽減や振興を進めようとしている。

翁長知事は、沖縄防衛局による辺野古でのボーリング作業の「停止指示」を出し、林芳正農水相はその効力を「一時的に止める」ことを決めた。翁長氏は、前知事の埋め立て承認を取り消す可能性も示唆している。

政府は、法的対応は冷静に行わざるを得ないが、より丁寧な対話による解決に努力してもらいたい。

私は以前聞いた辺野古住民の言葉を思い出す。「山口さん、安保政策は政府の行うことだが、普天間飛行場を辺野古へ誘致したいのではない。同じ沖縄県民として普天間周辺の人たちの苦悩を見過ごしにできない苦渋の決断だということを知ってほしい」というものだった。

このほど、中国が提唱する「アジアインフラ投資銀行(AIIB)」への世界各国の参加姿勢がほぼ決着した。日本と米国を除く、欧州や中東、中央アジア、インド、アセアン、オセアニア、韓国、台湾、ブラジルなど40以上の国や地域が参加の見通しとなった。

政府は「運営が不透明で、融資が焦げ付く恐れがあり、日米関係への配慮も大切」などとして参加を見送った。野党からは「外交的敗北だ」、経済界からは「インフラ投資ビジネスへの悪影響を懸念」などの声があがる。

中国の外交は奥深い。日本は国益を最大化し、国際協力姿勢を出すためにも柔軟な対応を忘れてはならない。

2015年4月7日付 掲載)

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