消費税率引き上げ、軽減税率による痛税感の緩和を

掲載記事2015年11月11日 (水曜日)

151110.jpg日本と中国、韓国など、東アジアは世界貿易の約2割を占める。その貿易を支える海上交通路(シーレーン)が南シナ海を通る。ベトナムとフィリピン・ボルネオの間にある南シナ海には、石油や天然ガスの海底資源があるともいわれ、航路の東側に広がるスプラトリー(中国名・南沙)諸島の領有権をめぐって、ベトナムとフィリピン、中国、台湾、マレーシアなどの間に争いが生じている。

フィリピンは、中国を相手にオランダのハーグ国際仲裁裁判所に提訴し、裁判所は管轄権を認め裁判を進めることになった。

こうした争いのあるなか、中国は一方的に一部の岩礁を埋め立て、3000メートル級の滑走路や港湾を建設するなど、軍事拠点化を進めている。これによって、国際法上の「航行の自由」が脅かされてはならない。

この中国の行動に対し、オバマ米大統領は先月末、「航行の自由作戦」を発動し、中国が岩礁の上に造成した人工島の周辺12カイリ(約22キロ)内にイージス駆逐艦を航行させた。「国連海洋法条約によれば、岩礁は領土ではなく、もともと公海である人工島の周辺12カイリ内の航行は自由である」と主張する。

米中両国は、9月の習近平国家主席訪米の際、南シナ海などでの不測の事態回避のために行動規範や通報制度を設ける合意をしており、航行の自由作戦発動後も、ハリス米太平洋軍司令官が訪中するなど、軍幹部の対話も重ねている。

安倍晋三首相は6日、米国の行動を支持したうえで、「開かれた自由で平和な海を守るには法の支配が貫徹されなければならない」と語り、関係国とこうした原則を確認していく姿勢を示した。

習主席は7日、シンガポールで「南シナ海情勢はおおむね平穏だ。航行や飛行の自由はこれまで問題になったことはないし、これからも問題になり得ない」と発言した。

今月は、G20(20カ国・地域)首脳会議や、APEC(アジア太平洋経済協力会議)など、国際会議で各国首脳の接する場が多い。

来年は、日本が日中韓首脳会議や、先進7カ国(G7)首脳会議(伊勢志摩サミット)の開催国となることから、南シナ海をはじめ海洋をめぐる課題も、国際法に基づき対話による平和的解決を進める機会とすることが重要だ。

さて、10月21日の政府与党連絡会議で、安倍首相は「2017年4月からの消費税率10%引き上げ時に、軽減税率の導入が間に合うよう中小事業者の負担にも配慮しつつ、具体策をとりまとめる必要がある」と表明し、与党に協力を促した。

民自公の3党合意に基づく、消費税の逆進性緩和策は、複数税率による軽減税率の導入に絞られた。給付制度は、低所得者の側が手続きをとらねばならず、8%引き上げ時には、3~4割の人に給付が届かなかった。軽減税率は、買い物時に100%軽減効果が及ぶので、はるかに優れている。

この教訓から消費税率の引き上げ実施には、軽減税率による痛税感の緩和など、経済の勢いを削がない知恵が必要である。

中韓との関係改善のため全力サポート誓う

掲載記事2015年10月21日 (水曜日)

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このたび、公明党代表団を率いて、ソウルと北京を相次いで訪問した。日韓、日中の関係改善の流れを、いっそう確かなものにするために、与党として首脳会談の環境を整える役割がある。安倍晋三首相が、韓国の朴槿恵(パク・クネ)大統領と、中国の習近平国家主席に宛てた親書を預かっての旅となった。

朴大統領は親書を受け取った後、「韓中日首脳会談も予定されており、三国関係、そして、韓日関係が発展する契機になってほしいと思う。ソウルで安倍首相とお会いできることを楽しみにしている」と語った。

慰安婦問題などの提起もあったが、私からは「両国間にはさまざまな課題はあるが、双方の政府の努力と強い意志が解決につながる。国会、特に与党は、政府間で達した合意を支えるべきである」と述べた。

朴大統領の穏やかな笑顔と芯のある語り口からは、関係改善への強い意欲が感じられた。

中国では、まず盧溝橋にある「抗日戦争記念館」に2度目の訪問をした。日本のジャーナリストから今年のお盆過ぎ、「展示内容が変わっていますよ」と聞いたので、自分の目で確かめようと思ったからだ。注目したのは、国交正常化後の日中関係発展の展示だ。

2010年の訪問時と変わっていたのは、昨年の北京APEC(アジア太平洋経済協力会議)で、安倍首相と習主席が握手を交わした写真が解説付きで加わっていたことだ。私と習主席(=当時は総書記)が13年1月に会談した写真も並んで展示されていた。安倍首相による「戦後70年談話」が出された後も、この展示が継続している。

館長の求めに応じて、私は記帳簿に「歴史を忘れず、平和を誓い、未来を創る」と記した。両国が力を合わせて、創造的に未来を建設していくことが大切だ。

北京でのアジア政党国際会議で、私はスピーチを行った。その後、習主席はグループ会見に臨む出席者代表を握手で迎えたが、私と最も長く言葉を交わした。安倍首相の親書を手渡して、「東京の桜をご覧いただきたいと願っています」と伝えた。習主席は、通訳の言葉を聞きながら、にっこりとうなずいていた。

日中韓それぞれのリーダーが、対話を重ねていくことこそ、信頼と安定をもたらす基礎である。今後の努力を期待したい。

海外訪問中に、第3次安倍改造内閣がスタートした。内閣の骨格を担う主要閣僚9人は続投となり、「新3本の矢」を射る推進力として9人を新任とした。

注目の「1億総活躍担当相」には、加藤勝信氏が抜擢された。官房副長官として発揮した、手堅い手腕とバランス感覚が生きるといい。TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)の大筋合意に絡む国内対策で、農政に明るい森山裕農水相の起用も期待される。

わが党からは、石井啓一国交相が、前任の太田昭宏氏からバトンタッチした。旧建設省出身で、政調会長を6年間務めた幅広い政策通であり、次世代の担い手でもある。

政府与党、気合一新で国民のために働きたい。

平成27年(2015年)10月21日(20日発行)付 夕刊フジ掲載】

近く中韓訪問 関係改善に努力

掲載記事2015年10月07日 (水曜日)

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このたび、私は公明党代表団を率いて、7日~9日に韓国のソウルを、13日~16日に中国の北京をそれぞれ訪問する。私の訪韓は2010年11月以来、訪中は13年1月以来である。

安倍晋三首相の「戦後70年談話」は内外でおおむね妥当な評価を受け、日本と中韓の関係は改善の方向にある。日中韓首脳会談が10月末にも開催が模索されるなか、この機を逃さず中韓との関係を改善し首脳会談を実現させていくことが重要であり、与党としてその環境を整えていく役割がある。

また、安全保障関連法制が成立したことから、日米同盟の抑止力を高めることが、地域の安定に寄与し、対話と交流によって課題を解決していくことの重要性を確認する機会にしたい。

公明党は、両国と長年にわたる交流を重ね信頼関係を築いてきた。その継続性のなかで行われる訪問でもある。

この度の訪韓は、韓国国会の副議長から昨年招待を受けたのがきっかけである。国会正副議長や与党セヌリ党党首など、政党関係者との交流を深めたい。

翌週の訪中では、北京で開催される「アジア政党国際会議」でスピーチを依頼されている。シルクロードをテーマにして今日的な人や物の交流の意義を探ろうというものだ。この機会に、中国対外連絡部の王家瑞部長をはじめ中国共産党の要人とも交流したい。

米アトランタで開かれていたTPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉は、参加12カ国の閣僚会議で、ようやく「大筋合意」に至った。アジア太平洋地域に経済規模で世界の4割、貿易額は世界の3分の1を占める巨大経済圏が誕生する。

輸出入の垣根が低くなり、国際的なビジネスのチャンスが広がる。少子高齢化の進行により労働人口の減少していく日本にとっては大きなメリットが期待できる。

半面、日本の農業など国内産業への影響に配慮を求める国会決議を踏まえて、その趣旨が守られているか精査していく必要がある。政府には、TPPの意義と合意の内容を積極的に国民に説明していくことを求めたい。

さて、内閣改造・自民党役員人事が7日に行われる。主要閣僚や自民党5役が続投すると伝えられる。公明党の意向は5日の党首会談で安倍首相に伝えた。人事は任命権者である安倍首相の判断に委ねられている。

これまでの政権運営の安定感を保ちながら、アベノミクスの「第2ステージ」を担う新しい推進力も期待したい。政権にとっては、来年夏の参院選で国民の評価につながるような政策を推進できる布陣になることが望ましい。

平成27年(2015年)10月6日(5日発行)付 夕刊フジ掲載】

安保法案審議後、良識の府にかなう結論を

掲載記事2015年09月09日 (水曜日)

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このところ、維新の党の雲行きが怪しくなってきた。他党のことを憶測であれこれ語ることはしない-というのが政界の基本的なマナーである。

しかし、終盤国会の焦点である安全保障法制について、維新の党は「対案」を提出して与党と協議を重ねている。その点で、政党として合意形成の責任を貫けるのかは気になるところである。維新の党幹部の言動を冷静に見ておく必要がある。

維新の党の松野頼久代表は5日、「反安倍晋三内閣の受け皿になる勢力をつくる必要がある。野党勢力を結集して年内に新党をつくりたい」との意向を述べた。安保関連法案については4日、民主党など5野党とともに「強引な採決を阻止する」方針を確認している。

一方、維新の党を離党した大阪市の橋下徹市長は先月28日、「大阪維新の会で国政政党をやる。年内には道筋をつけたい」と語っている。安保法案については同27日、「国のために安保法制をしっかりやってもらう」と党所属国会議員に求めた。

こうなると、松野氏と橋下氏、その影響下にある維新の国会議員はそれぞれ、新党の行方や安保法案の対応で、まったく違った方向を向いているというしかない。維新の党として「対案を国民のために合意しよう」という責任感を優先させているようにもみえない。

安倍晋三首相は先週末、大阪のテレビ番組に出演して、安保法制の必要性を訴えた。これまでも、国会日程のない時間帯で、さまざまなテレビ番組に出演して、安倍首相なりに国民に説明する努力をしてきている。「東京のテレビ局ならいいが、大阪はまずい」ということはない。なるべく広い視聴者に説明する努力はあってよい。

7日の政府与党連絡会議で、安倍首相は「野党から修正案が提出され、議論も深まってきている。引き続き、分かりやすい丁寧な説明を行い、緊張感を持って対応していきたい」と語った。私や谷垣禎一自民党幹事長は、与党を代表して「参院でしっかり結論を出して成立できるよう、政府与党で結束していきたい」と応じた。

また、谷垣氏は8日告示の自民党総裁選について「法案審議に影響がないよう万全の対応をしていきたい」と語っていた。野党の対案や修正案には、これからも与党はできるだけ真摯(しんし)に対応していく。

民主党は「参院の威信を懸けて、60日ルールは使わず、良識の府にふさわしい議論を展開しよう」と、本会議で与野党に呼びかけた。だが、参院で60日以内に結論を出さず、以後、衆院に国会の決定権を預けたまま、「成立の先送り」、つまり「結論を出さず」と叫ぶのは、参院の存在価値を自己否定する、無責任極まりない主張ではないのか。

良識の府にかなう結論を期待したい。

[平成27年(2015年)9月9日(8日発行)付 夕刊フジ掲載]

背景にあるのは「対話外交の推進」

掲載記事2015年08月25日 (火曜日)

150825zubatto.jpgこのところ、報道機関の世論調査で、安倍晋三内閣の支持率が回復している。テレビ朝日系のANNが6・3ポイント(22、23日)、共同通信が5・5ポイント(14、15日)、産経新聞・FNNが3・8ポイント(15、16日)、読売新聞が2ポイント(15、16日)と、それぞれ上昇した。7月の調査では、安全保障関連法案の衆院採決などを受けて、軒並み下落していたので、下げ止まりの様相だ。

この要因は、14日に発表した「戦後70年談話」が、国内外から比較的高い評価を受けたことが第1だ。新国立競技場白紙見直しの決断や、安保法案を一貫して、丁寧に説明している努力なども挙げてよいだろう。

「戦後70年談話」は、幅広くバランスをとる配慮がある。いわゆる4つのキーワード(侵略、植民地支配、痛切な反省、心からのおわび)は、すべて盛り込まれた。安倍首相の「主語がない」との批判もあるが、「こうした歴代内閣の立場は、今後も揺るぎない」と決めたのは安倍内閣であり、ここに隠れた主語があるとみた方がよい。

しかも、閣議決定という責任ある形にしたことにより、「○○首相談話」ではなく、日本の内閣の立場を「客観化」したところに重要な意義があると見るべきだ。

「私たちの先の世代に謝罪を続ける宿命を背負わせてはなりません」との部分だけを取り上げる論調があるが、大事なのは、その後の「しかし、私たち日本人は、世代を超えて、過去の歴史に真正面から向き合わなければなりません」との表現とセットでとらえることだ。

安保法案は、論戦が参院に移ってから、日本を取り巻く安全保障環境が厳しくなっている事実を指摘し、立法の背景を丁寧に説明するようになった。これは、特定国の脅威をあおるのではなく、事実に基づいて、「戦争を未然に防止する」仕組みを作るためである。

これによって、対話で課題を解決する外交を推進することにつながる。

政府与党は、内閣支持率に一喜一憂することなく、誠実に国民に向き合うべきである。

朝鮮半島の南北軍事境界線付近で20日、砲撃戦が行われた。22日からは板門店(パンムンジョム)で、南北高官が事態解決のため協議を続けており、今後も注視する必要がある。

思い出すのは、5年前、私が訪韓日程を終えて仁川(インチョン)国際空港を離陸した直後、北朝鮮が韓国・延坪島(ヨンピョンド)をいきなり砲撃し、死傷者を出したことだ。韓国には約3万6000人の日本人が暮らし、北朝鮮には数多くの拉致被害者がとらわれたままであることを、忘れてはならない。

21日の参院平和安全法制特別委員会で、この問題をだれも取り上げなかったのは、いささか敏感さに欠ける。

ようやく、24日の参院予算委員会の質疑で、岸田文雄外相は「北朝鮮は挑発行動を自制すべきであり、南北高官協議が緊張緩和につながることを期待する」と表明した。

緊張感を持って、政治の責任を果たさなければならない。

[平成27年(2015年)8月27日(26日発行)付 夕刊フジ掲載]

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