「良識の府」に汚点残した川口解任

掲載記事2013年05月14日 (火曜日)

夕刊フジ5月14日付自民党の川口順子元外相が9日、野党が提出した解任決議案が可決され、参院環境委員長を解任された。憲政史上初のことであり、「良識の府」たる参院に汚点を残したといえる。

解任理由は「2日間で許可した海外渡航期間を無断で延長し、自ら決めた環境委員会をすっぽかしたことはルール違反だ」というもの。確かに、表面的には参院軽視だが、川口氏には元外相としての事情があった。 

今回の渡航は、中国でアジア諸国の元外相らによる国際会議が開かれるため、川口氏が日本の立場を会議で主張し、中国要人と会うために許可された。日中関係がギクシャクするなか、重要な使命といえる。 

ところが渡航後、中国の楊潔●(よう・けつち)国務委員(前外相)が出席する会議と会談の日程が3日目に延びた。川口氏は帰国して委員会を開く責任と、本来の渡航目的を実現することとの板ばさみになった。 

熟慮の末、川口氏は「楊氏に会って意見を交わすことは国益に資する」と判断し、参院に「滞在延長の了承」を求めた。  

ところが、民主党など野党はこれに反発し、川口氏が陳謝したにもかかわらず、問答無用で「解任」を議決した。これでは、「楊氏との会談を拒否して帰国しろ」というに等しい。野党も許可した「渡航目的」にも反するではないか。 

日中関係の現状では「要人との対話」自体が国益といっていい。渡航後の状況変化はあり得ることで、川口氏が「滞在延長の了承」を求めたのだから、国益の視点から「延長がふさわしいか否か」を判断し、「板ばさみ」を解いてやるのが良識の府ではないのか。 

国会のルールは重要だが、政府にはできない役割を国会が担うという、大局観に立った柔軟な判断も必要だ。そもそも日中関係の悪化には、民主党にも大きな責任がある。あまりにもかたくなな野党の姿勢には、国民も国際社会もため息をつくばかりだろう。 

さて、日本郵政の人事が政治に翻弄されている。先日、「坂篤郎社長を退任させ、後任に西室泰三氏を起用する方針」と一斉に報道された。政府が100%の株式を保有するからといって、政権交代のたびに、実力者の意向でトップ人事が左右されるイメージができるのは避けたい。 

郵政ネットワークは国民の資産である。見直し後の新体制のもとで、TPP(環太平洋戦略的経済連携協定)交渉もにらみ、民営化を進めることが期待される。  

ドラスチックな郵政民営化を進めたため、さまざまな傷跡が残った。これに政権交代が重なり、複雑な因縁が取り巻いている。だからこそ「政治介入」を卒業し、本来の民営化にふさわしい運営に委ねるべきだ。   

●=簾の广を厂に、兼を虎に

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