
新年あけましておめでとうございます。新春対談は、「パラサイトシングル」「婚活」などの言葉を生み出した社会学者である山田昌弘中央大学教授と、公明党の山口那津男代表の顔合わせです。東日本大震災などにより「絆」や「つながり」が改めて注目される中で、人はどんな時に幸福感を得るのか、安心して暮らせる社会をつくるには、などについて大いに語り合ってもらいました。
山口那津男 東日本大震災などを機に、日本人の価値観や幸福感が大きく変化していると感じます。どう分析されますか?
山田昌弘教授 震災は日本の社会全体に大きな衝撃を与えました。その現実を目の当たりした多くの日本人は「物質的幸福の儚さ」を痛感する一方で、家族や人との「つながり」や「絆」の尊さ、大切さを改めて実感したと思います。今まで幸福を感じる土台としていた家族や家、そして仕事、そのすべてを失った時に、人は何に幸福の保証を求めればいいのか。私は、それは「自分を必要としてくれる人の存在」「寄り添ってくれる人の存在」ではないかと思っています。
山口 震災後、家族や親子の「絆」を描いたテレビドラマが次々と放映されました。例えば「家政婦のミタ」が大ヒットしましたが、そこにも日本人の意識の変化を感じています。また震災後、正社員、学生、フリーターを問わず延べ80万人超のボランティアが被災地に赴いており、その流れは今も続いています。人は「人のために動く」「人の役に立つ」ことで、生きる喜び≠感じるのではないでしょうか。
山田 その通りです。「相手の幸福を増やす作業」という点では、実はボランティアも仕事も一緒なのです。本来、仕事も世の中に必要だから存在しています。必ず喜ぶ人がいます。しかし、現在の日本の就労環境を見ると、非正規雇用が多くなり、まるで機械の歯車のような働き方が増えてしまいました。そこでは喜び≠感じることが難しい状況です。仕事の世界が劣化しています。
山口 私は茨城県内の企業城下町で育ちました。高度経済成長期だったその当時は、企業が社内で人材を育成していました。意欲さえあれば、社員はさらに上を目指すこともできましたし、そこには、仲間意識や家族意識を培う機会がたくさんありました。
山田 同感です。当時のようにだれもが結婚でき、正社員になれた時代は、「絆」は自動的につくられました。仕事仲間のため、家族のために働くことが幸福感に直結していました。しかし、結婚をしない人、正社員ではない人が増えています。今や「絆」は自らつくる時代になったのです。
山口 人との絆は、相手に「共感」するところから生まれます。これは公明党の「大衆とともに」の立党精神にも通じます。今回の被災地支援においても、公明党は、まず「被災者に寄り添う」「共感」するところから始まりました。そして、現場に足を運んだ議員同士が緊密に連携する中で、適確にニーズをつかみ、課題解決に取り組んできました。公明党ならではのネットワーク力、チーム力を存分に発揮できたと自負しています。
山田 存じております。私は読売新聞の「人生案内」の回答者を担当していますが、ここでも変化を感じています。本人に関する相談だけでなく、家族を心配する相談が増えています。人は、周囲の人も一緒にいい状態でないと、真に幸福を感じられないのです。また、幸福には相乗効果があります。相手を幸せにすれば、それは自分に返ってきます。そして人は、自分が幸福になると、それを分けたくなります。
山口 人が幸福を実感できる社会をつくる必要がありますね。そのためには、多様な生き方が認められる社会をつくること。そしてもう一つは、「絆」や「つながり」が持てる社会、「支えあう社会」をつくることです。これは政治が果たすべき役割です。
山田 従来の日本の社会は、「正社員の夫と専業主婦の妻」をモデルとしていました。しかし、これだけ非正規雇用が増え、経済的に不安定で家族を形成することが困難な若者が増える中では、その形は確実に崩壊に向かっています。正社員だけでなく、非正規など多様な働き方を選択している人々が安心して暮らせる仕組みが必要です。
山口 政治は、社会保障の機能をいかに強化していくかを、もっと真剣に議論しなければなりません。このため公明党は一昨年、「新しい福祉社会ビジョン」を策定し、新しい社会保障制度の在り方をさまざま提案させていただきました。しかし、現在の民主党政権を見ていると、社会保障の全体像を示さないまま、税負担の在り方の議論ばかりが先行しています。
山田 おっしゃる通りです。どんな働き方でも、家族がいなくても安心できる社会保障の仕組みをまず提示すべきです。お金の帳尻合わせは最後でいい。
山口 今年の年賀状は、新年を祝う言葉に代わって、自身の近況を知らせる「元気だ状」や、「希望」「絆」などの言葉を添えたあいさつ状が全国にあふれているようです。私はこうした動きは、人々の日本再建への強い期待の現れだとも受け止めています。 こうした人々の思いや声を敏感に感じ取り、政策に反映させる力を持っている政党こそが公明党です。公明党のネットワーク力、チーム力は日本再建の力です。全議員が一丸となって政策実現に取り組みます。
山田 欧米諸国は個人主義の国々と思われがちですが、実は地域コミュニティーなどで、一人一人が強く結びついています。公明党は地域に根差すネットワークがあるからこそ、社会の変化に柔軟に対応しつつ政策提言できる政党だと思っています。今年の活躍に期待しています。
山田昌弘 氏
やまだ・まさひろ:1957年東京都生まれ。中央大学文学部教授。子ども・若者・夫婦・家族を取り巻く現状を鋭く分析し、打開策を提言し続ける社会学者として活躍する。専門は家族社会学・感情社会学・ジェンダー論。内閣府・幸福度に関する研究会委員。