政権交代2年で3人目の野田新政権をどう見る

現場の想像力や緊張感に欠け 「不完全な内閣」

震災復旧・復興を最優先に公明党が政治を進める原動力に

国民の期待を裏切った2年間

ー民主党政権は2009年の政権交代からの2年間で既に3人目の首相交代という異常事態だが、明確な反省の弁も聞かれない。まず、民主党政権のこれまでの総括を。

山口 民主党は野党時代から「ブーメラン政党」と言われてきたが、与党になってもその体質は変わらなかった。つまり、自公政権で安倍晋三、福田康夫、麻生太郎と首相交代が続いたことに鋭い批判を浴びせ、政権交代を訴えてきた民主党自身に、そのままその批判が返ってきたということだ。結果、国民の期待を大きく裏切った。 まず鳩山由紀夫氏は、自らの「政治とカネ」の問題や米軍普天間飛行場の移設問題などで辞任。その後、鳩山内閣で副総理だった菅直人氏が満を持しての登場かと思いきや、初陣となった10年の参院選で突如、消費税増税を言い出しつまずいた。これが現在に至る国会の衆参両院のねじれ構造を作ってしまったわけだ。ねじれ国会の中では野党と協調して合意形成を図っていかなければならないのに、菅氏は野党に対し挑戦的な言動、態度を繰り返した。また、尖閣諸島沖の中国漁船衝突事件で国益を損なう失態を演じ、環太平洋連携協定(TPP)や「税と社会保障の一体改革」などもさしたる進展がない。

その中で今年3月11日、東日本大震災が起きた。震災直前の内閣支持率は20%を割り込み、この内閣はもはや「死に体」だと思われたが、国難ともいえる事態を前に公明党から政治休戦を表明し、全面的な協力をすることを約束した。 ところが、政府からは与野党協調で危機を乗り越えようという積極的なリーダーシップもない。震災対応は後手に回り続け、私は6月1日の党首討論で「遅い」「鈍い」「心がない」と、菅内閣の問題点を具体例を挙げながら糾弾。同日、不信任決議案の衆院提出に至った。菅氏は翌日に「偽装退陣」表明で国民を騙し、その後、約3カ月にわたって政治空白を作った。 そしてようやく菅氏が退陣し、自らをドジョウに例え、庶民性や泥臭さ、腰の低さを売り物にした野田佳彦首相が誕生した。国民からは民主党政権の体たらくは明らかだが、それでも震災復旧・復興、さらに折からの国際経済情勢の変化に伴う急激な円高への対応が急務であることから、野田政権にわずかな望みを託しているというのが実態だ。

「適材適所」は名ばかり

―野田政権発足直後のマスコミ各社の調査では支持率が50%台から60%台と比較的高かったが、滑り出しから閣僚の問題発言が相次ぎ、辞任者が出る始末だ。

山口 その支持率は、野田首相が挙党態勢を作ろうとしたところまでのものだ。そもそも今回の代表選は短期間だったにもかかわらず、数多くの候補者が出たこと自体がやはり民主党は党内がバラバラだったという象徴だ。 そこで実際に作った内閣、党役員の顔ぶれを見てみると、党内各グループの議員を処遇するのが精一杯で、「適材適所」とは名ばかりだ。就任わずか9日目で経済産業相、原発を所管し原発事故対応を含むエネルギー政策の見直しを行うべき重要閣僚が辞任したことは、図らずも民主党の平野博文国会対策委員長が「不完全な内閣」と言っていたことの一端が露呈した格好だ。 しかし、だからといってそれは所信表明と代表質問だけで予算委員会の開催を拒否し、臨時国会をわずか4日間で閉じていいという理由にはならない。会期日程の議決を強行したことは、「正心誠意」といった野田首相の言葉とは裏腹な不誠実かつ強引な態度だ。もちろん、公明党をはじめとする野党はそれを怒り、突っぱねた。そして14日間の会期延長へと方針転換させた。 本来なら、国連総会や日米首脳会談などで訪米する前に、予算委員会を含め、まず国政の基本的方針に対しての議論を開始して、国民に自らの考えを示すべきだった。このような国会運営では、与野党間の信頼は生まれないし、国民も非常に不信感を持つだろう。

キャスチングボートを生かして

―野田政権に対して公明党はどう臨むか。

山口 野田政権が最優先課題と位置付けた震災からの復旧・復興に対しては基本的には力を合わせて応じていきたい。民主党政権がやっと正面から向き合い始めてきたが、そのための各党間の合意作りや協議のための土俵作りに取り組んでいく。また、円高その他の緊急性の高い問題への対応にも全力で当たりたい。 民主党政権は政治主導を掲げるものの、与党の力を結集できず、閣僚組織も使いこなせないため、とにかく物事の決定が遅い。スピード感がない。その中で政治を国会主導でどんどん進めていきたい。公明党は先の通常国会でも震災関連法案を中心にした28本の議員立法成立をリードした。ねじれ国会下でキャスチングボート(決定権)を握る立場として、野党ではあるが、その役割と責任は重いと思っている。 ただ一方で、国民に信を問うべきという声がある。確かに首相が3人も交代し、政権交代の原動力になったマニフェストが破綻した今に至っては、政権としての正当性を失っているともいえる。マニフェストの目玉政策だった「子ども手当」も、財源の見通しが立たないため廃止され、代わりに児童手当が復活することになった。この財源の責任者が当時、財務相だった野田首相である。その意味では、まさに信を問わなければならない局面にあることは確かで、ここを強調しているのが自民党だ。

しかし、公明党の立場は、先に述べたとおり、必ずしもそうではない。また、信を問うことが政治的には意味があったとしても、制度の面で二つの課題がある。 一つは、まだ被災地では県議選すらできない地域が残っているということだ。震災を受けたまさに当事者たちが国政に対して物を言えないような時期に総選挙を求めるというのは国会の側が憲法違反を侵すことになりかねない。もう一つは、そもそも最高裁判所が今年3月の判決で、09年衆院選小選挙区で「1票の格差」が最大で2・30倍だったことを「違憲状態」としたことである。最高裁はさらに格差を生む主因として「1人別枠方式」(小選挙区の300議席を、まず47都道府県に1議席ずつ配分し、残り253議席を人口比で割り振る仕組み)の廃止を求めている。 これらの問題に対して、国会がまず誠意を持って一つ一つ解消する努力をし、結論を出すことが先決だ。それが正しい筋道だと思う。

選挙制度は正確な民意反映を

―選挙制度改革に当たっては、過去の政治改革で目指してきた二大政党制が果たして政治を良くしたのかどうかということも問われるべきでは。

山口 二大政党への不信、また、二大政党が主要な役目を担う現在の選挙制度を根本的に考え直すべきではないかという意識が広まりつつあるのは確かだ。そもそも日本が手本にした英国ですら、二大政党の枠組みが大きく崩れつつあり、第三党の得票率が伸びている状況だ。議席獲得において無理やり二大政党が相対的優位を占めるようにする制度は、民意を著しくゆがめた国会構造にしてしまうという課題が歴然とある。他方、米国も近年、上院と下院のねじれ状況が政治の進行を阻害し、その反省をしつつある。さらに二大政党に対する国民の飽きというものが出てきて、投票率は年々下がりつつある。つまり、二大政党制の母国ともいわれる両国が現行制度の先行きに困難を抱えている。

世界の国々の選挙制度の流れは、むしろ民意をきちんと反映する比例代表を中心とする制度だ。日本でも、現行の小選挙区比例代表並立制が本来の目標である民意の集約機能の強化や意思決定の迅速化につながらず、その半面、民意の反映を犠牲にしているという欠陥が、同制度導入から十数年を経て、自民党政権下でも民主党政権下でも同じく実証的に明らかになっている。 加えて日本は二院制だ。参院においても、最大格差が5・00倍となった10年の同選挙を各地の高裁が「違憲」もしくは「違憲状態」と判決している。また、国民が衆院の結果とバランスを取るかのように、参院選の1人区では反対の結果が出ている。これがねじれを生み出すもとになっている。 ねじれ自体は国民の選択だから、悪いと決めつけるのはおかしいが、衆参の両選挙制度によって日本政治が不安定化し、政治の意思決定のスピードを遅らせている元凶であるならば、正しく見直さなければいけない。やはり民意を正確に反映するという民主主義の基本に立ち戻った選挙制度に改め、その上でいかに合意を形成していくかという政治経験を成熟・発達させるのがふさわしい道だと思う。

公明提言、第3次に盛り込め

―政府は本格的な復興に向けた今年度第3次補正予算案を10月下旬に国会提出するようだ。

山口 われわれは第1次補正予算の時でさえ、本格復興に向けた予算編成を提唱していた。第1次補正予算の成立後は、残った課題―子ども手当の見直しや赤字国債発行を認める特例公債法案の扱いなど―について民主、自民、公明3党で交わした確認書に基づき、速やかに処理し、第2次補正予算を本格的な復興予算として作るべきだと主張した。それでも政府は党内事情からなかなか確認書の中身を実行せず、第2次補正予算も総額約2兆円規模にとどまってしまった。そして政府は遅れに遅れて第3次補正予算に取り掛かっている状態だ。この間の民主党政権による政治空白は、被災者や国民生活に対する現場の想像力や緊張感が全く欠落していた証拠と、その責任を厳しく問われなければならない。

その上で第3次補正予算に盛り込むべき施策として、公明党は9月8日、「震災復興及び経済対策に必要な予算に関する提言」を発表した。同提言の予算規模は約13兆5000億円で、中途半端だった第2次補正予算を大幅に拡充するものだ。提言の柱は、@被災地の本格的支援を加速させるための「大震災からの復旧・復興対策」(約9兆5000億円)A復興に欠かせない日本経済の再生を図る「総合経済対策」(約4兆円)―の二つ。 復旧・復興対策では、被災自治体支援として「復興一括交付金」や「復興基金」の創設、集団移転促進事業の拡充、被災した土地の買い上げ・借り上げ、三陸沿岸道路の整備など社会インフラの早期復興、被災児童・生徒の就学支援、学校の耐震化および防災機能の強化などを具体的に提案している。 総合経済対策では、@中小企業A雇用B産業空洞化CエネルギーD観光振興―で構成し、中小企業の資金繰り対策強化、雇用関連の基金積み増し・延長、中小企業の国内立地を支援する「新規立地補助制度」の創設、冷蔵庫やエアコンなどの買い替えを促す「節電エコポイント」創設などを盛り込んだ。 ただ残念ながら、公明党がいち早く提言しても、民主党政権からの反応は鈍い。それは党内、与党内の意見がまとまらないからだ。だから野党との協議にも臨めない。意思決定が遅いという政府・与党の怠慢は、相変わらず治っていない。

現場からの政策提言重ね

今後、民主、自民、公明3党による協議の中で民主、自民両党が政策的に対立した場合、公明党が両党を説得し納得できる合意を作っていく必要が出てくるだろう。その際に重要なのは、その合意が妥当性、正当性をどれだけ持っているかということだ。それはつまり現場のニーズにどれだけ沿っているかということでもある。 ここで公明党は大いに力を発揮できるに違いない。それは、全国多数の地方議員によって張りめぐられたネットワーク力という両党にない持ち味が公明党にはあるからだ。公明党は、市町村議員が都道府県議員、国会議員と連携する縦のネットワークと、市町村議員同士の横のネットワークを生かし、現場から説得力ある政策提言ができる。 東日本大震災、あるいは9月に紀伊半島などを襲った台風12号、15号による災害でも、現場のニーズを最も身近で敏感につかむ市町村議員の存在があって、数々の実績を築くことができた。 具体的に挙げると、議員立法による改正で災害弔慰金を兄弟姉妹だけで暮らす家族にも支給できるようにした。これは、被災者から地元の公明党議員に寄せられた声をもとに実現したものだ。また、政府からの直接支援が乏しい中で義援金などが差し押さえられることがないようにもした。これも同じく議員立法だ。

私自身、9月16日の参院本会議の代表質問では、台風12号の豪雨被害を受けた紀伊半島の和歌山、三重両県を視察、調査した内容を踏まえ、野田首相に対して激甚災害指定への対応を迫り、「激甚災害に指定し、被災者の生活再建の支援や被災した家への財政支援を図る」という明確な答弁を得ることができた。 また、紀伊半島でのミッシングリンク(高速道路が途切れた区間)の解消についても、東日本大震災で岩手県の三陸縦貫自動車道が物資や人を運ぶ重要な道路として機能した実例を紹介しつつ政府の見解を求めたところ、その解消に意欲を示した。 民主党政権は「コンクリートから人へ」という抽象的なスローガンを掲げ、必要な公共事業すらムダと決めつけて削減し、やるべきことをやってこなかった。ところが、三陸縦貫自動車道の釜石山田道路が震災の直前に開通していたことで、まさしく「生命をつなぐ道路」として機能したことから、政府としては前向きに取り組むと言わざるを得なくなった。 ともあれ、震災から6カ月が経過し今なお不自由な避難生活を強いられている被災者が多い。原発事故の収束や放射能汚染された地域の除染、新しいまちづくり、被災企業の支援、雇用の確保など、山積する課題は待ったなしである。それらに対し、公明党は現場の声をもとに具体的に一つ一つ政策提言し、さらに実行させるよう、民主、自民両党をリードする気迫で積極的に取り組んでいきたい。

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